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いい感じに蓄えた技術的なことを吐き出すところ。もしくは独り言

適応障害/うつ状態になったエンジニアが回復するまでにやったことを伝えたい

はじめに

2021/1末に、病院で適応障害/うつ状態であると診断され、約一ヶ月半ほど仕事をお休みしていた。今は復帰してペースを抑えつつ、ゆっくりと立ち上がっている最中だ。

エンジニア界隈だと、メンタルに不調を抱える人が何故か多いように感じている。みんな真面目で頑張り屋さんが多いからではないかと勝手に思っている。

また昨今のコロナ禍において、今までのリズムではない生活(在宅勤務など含め)を強いられたり、コロナ自体に対する不安や、人と接する機会が減り相談しにくかったり、なにかとストレスがかかる状態だ。コロナうつ、不安障害などの言葉をニュースで聞くようになったので、きっと苦しんでいる人が多いのだろう。

今まさに、同じような状態の人や、自分はうつなんじゃないかと思いつつも認めたくなかったり、悩みながら仕事をしたり生活を続けている人も多いのではないかと思う。

そういう人達に何か参考になるものを伝えられないかと思い、記事にしてみることにした。

この記事では、私自身がどんな状態だったのかはあったほうがわかりやすいと思うので書くが、「読んで参考になった、よかった」と思ってもらえるように、なるべくポジティブに、読んでいる人に寄りそう文体で、やったことと理屈がわかるように書いているつもりだ。偉そうな口調で大仰に語っているが、率直な私の想いと思って見逃してほしい。決して偉ぶりたいわけではないし、単純に読んでくれた人が良くなってほしいという想いしかないことを付け加えておく。書きやすい文体で書いたらこうなってしまっただけなのだ、、、

さて、序文が長すぎると読む気が失せると思うので、このあたりにして、さっそく中身に入っていこう。

と思ったが、最後に一つだけ。

あくまで個人的にやって良かったことなので、万人に当てはまるかは、どうしてもわからない。その点はご容赦頂きたい。ただ一般的に良いとされていることを取り入れているので参考にはなるはずだ。ここでいう一般的とは、専門家の先生や裏付けされた研究結果をまとめたもの、つまり書籍に書かれていることになる。ド素人が考えた当てずっぽうではないので安心してほしい。ただ参考書籍は適応障害やうつを回復することを主眼としたものではないので、この記事では、その症状に苦しんでいる人が適用するとこうなるという内容が主になる。

参考にしている書籍は以下の通りだ。興味があったり、この記事を読むのがかったるい人は、是非読んで頂きたい。

参考書籍

それでは長くなったが、中身に入ろう。

目次

結局何がよかったのか

だらだらと長い文章の中に大切なことが散りばめられていたり、結論が最後までわからない構成は小説以外では好みではない。なので、最初に書いてしまおう。理屈や体験談は後回しだ。個人的にやって良かったと思っているのは、これだ。

  • まずは病院に行こう
  • とにかく寝よう
  • 脳味噌を休ませよう
  • 睡眠の質を上げていこう
  • 体を動かしていこう
  • ご飯を食べよう
  • 作った生活リズムを保とう
  • 自分達と対話しよう
  • 少しずつ仕事関連の本を読もう
  • 自分達を信じよう

粒度がバラバラで抽象的なものもあり、よくわからないと思うが、一つずつ後で見ていく。こう書いてしまうと、「よし、じゃあ全部やってみよう」といきなり全部やり始めてしまう諸兄姉もいるだろう。待ってほしい。もちろん全部始めてできてしまう人がいるのは否定しない。ただ適応障害/うつ状態だと、置いていかれてしまう「あなたの中の人達」がいるはずだ。あなたの中には、あなたを含めて3人いるのを忘れないでほしい。あとの2人とは、誰か。「潜在意識」と「無意識」だ(あなたは、「顕在意識」だ)。彼らの意見も聞きながら進めないと、きっと挫折してしまうと思う。だからここは、焦らず順番に一つずついこう。

まずは病院に行こう

既に病院に行って診断を受けている人は読み飛ばしてもらって構わない。まだ行ってないのであれば、今すぐこの記事を読むのを止めて、近くの病院をググり、すぐに予約しよう。悩む必要も考える必要もない。即病院だ。「もしかしてと思っているだけだし、まだ行かなくていいや」と思っているそこのあなたもだ。クドいようだが一番大切なので、もう一度言おう。「まずは病院に行こう」

病院って何科に行けばいいの?

そう、行くのはいいけど何科に行けばいいのかよくわからない。私もそうだった。調べればすぐにわかることだが、精神科か心療内科になる。診断を受けるだけなら、どちらでもいいだろう。ただ継続的な通院を考えるとどちらが何であるかは知っておいて損はない。

  • 精神科: 精神的な不調を原因として症状が精神的なもの
  • 心療内科: 精神的な不調を原因として症状が身体的なもの

あなたがどちらにあたりそうか30秒考えよう。やはりどちらかわからないなら、どちらでもいいのですぐに行こう。悩んでいる時間があったら、すぐに行くべきだ。受診した科と違う科が当てはまるなら、先生が教えてくれるはずだ。

それでも病院に行きにくいのだ

わかる。とても。自分がメンタルをやられているというのは認めたくなかったり、「まだ大丈夫、まだ頑張れる」と耐えてしまいがちだ。中にはこう考える人もいるだろう。周りの人達に心配をかけたくない、心証が悪い、会社での評価がさがってしまう、出世コースから外れてしまう、などなど。あぁ、痛いほどにわかる、わかってしまう。まさに私も考えていたことだ。だからこそ、どうしても伝えたい。「お疲れ様。わかるよ。だけど、大丈夫だよ。だから、安心して休もう」

一番大切で大事なのは、「あなたの心と体」だ。自分を大事にできてないのに、他の人を大事にできるわけがない。そもそも他人を考えられるほどの気持ちの余白は今絶対にないはずだし、その状態で考えても良い案なんて浮かばない。後のことは、立ち直ってから考えればよろしい。人生100年時代に、あなた以上に価値があって大事な資本はない。

気分が晴れるかわからないが、一つ話をしよう。

日本ではいまいち理解が得られないし、かかると何故か「ダサい、かっこわるい、メンタル弱すぎ」となりがちな適応障害、うつ。色々言われているが、これらは「単なる風邪」だ。体ではなく、心の風邪。誰でもなるし、治るものだ。そんなに重いものじゃない。海外では、メンタル不調でお休みすることを「シックリーブ」という。周りの人達や会社も理解が深く、シックリーブで休むなんて日常茶飯事だ。(と書いてはいるが、私は日系企業勤めで、調べたことを書いているだけだが、、、)

言いたかったのは、「誰でもなるし、治る」ということだ。深く考える必要はない。風邪になったら内科に行って、診てもらって薬をもらう。これと同じことだ。さぁ、病院へ行こう。

病院へ行くとどうなるの?

これは個々人で変わることだろうから、書けるのは私のことだけだ。今も通院はしているが、だいたいこんなところだ。

  • 相談にのってくれる
  • 薬物療法
  • 行動療法(これは症状改善してからだが)

症状の重さに依存するが、薬物療法で処方されるのは恐らくレクサプロだろう。どんなものかというと、服用するとセロトニンという神経伝達物質の濃度が高まり心が安定する。セロトニン扁桃体の活動を抑えてくれる役割がある。扁桃体とは、脳の中で不安や恐怖を感じている際に活発に活動することがわかっている。適応障害/うつ、あるいは不安障害の人は、扁桃体が常に活発でセロトニンも不足しているため、過剰に不安や恐怖を感じ続けてしまうというわけだ。「え、じゃあ薬に頼らないと、ずっと不安や恐怖を感じながら生きないといけないの?」と思うかもしれない。そんなことはない。人間の体はよくできている。セロトニンを日常生活だけで十分増やす方法がある。この後順番に紹介するので安心してほしい。

とはいえ、いきなりセロトニンをドバドバ増やすことは体調的にも気持ち的にも難しいので、まずは薬を補助として使うくらいに思っておこう。自分でドバドバとセロトニンを作れるようになったらお役御免だ。

薬について

少しだけネガティブなことを言わないといけない。レクサプロについてだ。個人差があるが、副作用がある。詳しくは先生が教えてくれるだろうが、レクサプロの服用初期は胃腸系を過敏にする。自分の場合は、一日中吐き気がするというものだった。これも先生が教えてくれるだろうが、この副作用は初期だけでそのうちおさまっていくので、安心してほしい。飲み始めは、この副作用の出方をみるために、通常服用量の半分で処方されるはずだ。胃腸が弱くて心配だという人は、先生に相談しよう。相談すると胃腸薬を一緒に処方してくれる。

とにかく寝よう

病院で診断を受けて、会社にお休みを伝えたら、まず最初は、「とにかく寝よう」。病院の先生も恐らく、「時間を気にせず寝ることと頭をとにかく休ませてください」と言ってくれたはずだ。その真意は、「あなたはとにかく頑張って、ここまでやって来たのだ。お疲れ様。今は「頑張って休む」ことに集中しよう」だ。興奮状態の偏桃体をゆっくり休めるためには、「休むことを頑張る」必要がある。寝るのはその近道だ。

そもそも寝られない

私もそうだったので、これも書いておこう。先生にも、周りの人にも「とにかく休もう、寝られるだけ寝よう」と言われるのだが、そもそも寝られないのだ。私の場合は、休みに入る直前あたりから一睡もできないか、寝れても2~3時間の日ばかりだった。当然休みに入ってからも、そのような状態が続いていた。そして、一番酷かったのはベッドで寝ること自体を不安に感じてしまっていたことだ。ベッドで上手く寝ることができない日々が続いたため、「今日も上手く寝れないんじゃないか」と考えてしまって寝られない。場所自体にネガティブな印象を持ってしまっていた。

では、どうしたか。眠気を感じたら、床でもソファでも、とにかくベッド以外の場所で横になって寝るようにしていた。まぁ、もちろん体は痛くなるのだが、まずは「自分は寝ることができた」という成功体験を積むことが優先だ。

朝でも、昼でも、夜でもいい。寝られない人は、眠いと思ったら横になろう。横になって目をつぶるだけでいい。場所もどこでもいい。大切なのは、「寝よう」と意気込まず、眠いから横になり、「結果的に」眠ることだ。最初は長さもバラバラでいいし、なんなら一日の間に4、5回に分けて眠ったっていい。まずは、ちゃんと寝られるという体験を積んでいくことが大切だ。

睡眠導入剤について

先生からは睡眠導入剤を勧められるかもしれない。あまりに酷い場合は最初のうちは薬に助けてもらうのも手だ。が、もちろんなくても寝られるならないほうがいい。睡眠の質を上げる方法もこの後紹介する。頑張れそうだなと思ったら薬はなくてもいいと思う。辛かったら先生に相談して処方してもらえばいいので、深く考えすぎなくていい。また睡眠導入剤に対して抵抗がある場合は漢方薬もある。私の場合は睡眠の質を上げる漢方薬(抑肝散加陳皮半夏)を処方してもらっている。それなりに効果があると思う(思うことでのプラシーボ効果かもしれないが)

脳味噌を休ませよう

さて、前項の「とにかく寝よう」というのは脳味噌を休ませるためにするわけだが、あなたが熊のように冬眠でもできない限りは、24時間のうち十数時間は起きている状態のはずだ。回復初期段階では、起きている時間も脳味噌を休ませることに努めることをお勧めする。せっかく仕事を休んでいるので、好きなことをすればいいのだが注意が必要だ。脳が興奮状態を継続してしまう行為は避けるべきだ。具体的には、以下の通りだ。

  1. ブルーライトを発する機器を長時間見続ける
  2. あれこれ考えこんで不安を感じる

ブルーライトを発する機器の代表は、PC、スマホ、TVだ。スマホ含めてTVゲームもあまりお勧めはしない(先生からも控えることを勧められるはずだ)。APEXやモンスターハンターライズは、元気になるまで楽しみにとっておこう。ブルーライトの何がよくないのか。ブルーライトとは日光に含まれる周波帯としても知られる光である。目の神経がこの周波帯を受け取ると、交感神経が優位になり脳が活発な状態となる。つまり脳が動きまくって疲れるのだ。

またPCやスマホであれこれ調べものをしたり、なんとなく暇つぶしに見ることも、お勧めできない。これはブルーライトによる興奮もそうだが、不安を感じる可能性があるからだ。

「カラーバス効果」というのをご存じだろうか。これは、ある一つのことを意識すると、それに関する情報を無意識に集めようとする現象のことだ。試してみよう。目をつぶって30秒間黒いものを連想してほしい。そして、ゆっくりと目を開けて、ぼーっと周りを見渡してほしい。PCのモニター、スマホ、机、椅子、鞄など周りにある黒いものが目につかないだろうか。これが「カラーバス効果」である。似たようなことで、コロナ禍において、その不安から、あれこれ無意識に調べ始めてしまい、ネガティブな情報も含めて知ってしまうことで、より不安にかられてしまうというものがある。同様に、あなたが今苦しんでいる症状や状態に関することは、あなたにとって今一番のトピックになっているはずだ。あなたと他人は全く違う。似たような症状だったとしてもだ。意味も理屈もないのに不安にかられてしまうくらいなら、最初から見ないほうがいい。よって、PC、スマホも最初は遠ざけることをお勧めする。

では、なにをすればいいのか。これを機会にやってみたかった趣味を始めてもいいし、上記に触れないのであれば、何をしててもいい。私の場合は、ひたすら本を読んでいた。読書家の方もいるだろうから、とやかく言うことでもないだろうが、読書習慣がないけど何か読みたいという方向けに個人的に面白かった本を紹介する。趣味が全開なのは、ご容赦頂きたい。(舞城王太郎は万人向けではないので、どういう文体か調べてから読むことをお勧めする)

面白かった本

現代人からすると、だいぶ時代を遡るような生活となるが、それでいい。「スマホ脳」と叫ばれているように、人間は狩猟時代から脳や体は大きく進化していない。便利な電子機器を悪影響なく扱えるようにはまだ進化できていないのだ。原始時代的な生活は退屈かもしれないが、人間の脳と体からすれば自然なので、休ませるには好都合なのである。

私の場合は、上記に加えて、読書をする場所を変えるようにしていた。普段オフィスワークの人ならあまり気にならないだろうが、私は在宅勤務だったため、家にいるとどうしても仕事のことが頭をよぎってしまい休息にならなかった。コロナ禍ではあるが、細心の注意を払い、人の少ないカフェに行って読書するようにしていた。場所というのはなかなか大事で、悪かった経験をした場所は当然ながら悪い印象を持っているため、無意識に緊張してしまうものだ。場所を変えるというのも、お勧めだ。

睡眠の質を上げていこう

ここまで来たということは、前時代的な生活を送り、脳の休息が少しずつとれてきている頃だろう。ほんの少しでもいい、何某か自分が変わってきているなと思えているなら上々だ。ここからは、脳と体に良いとされることを「自分のペースで少しずつ」取り入れていき、暖機運転していってもいい頃合だろう。大切なことなので、もう一回言おう。「自分のペースで少しずつ」だ。後の項で言うつもりだが、「あなたの中のもう二人」を無視して取り入れると、続かなくなってしまう。ここでも焦らずゆっくりだ。時間はたくさんあるのだから。

睡眠の質を上げるとはどういうことか。たくさん寝ればいいのかというと、そうではない。適切な長さの睡眠はもちろん必要だが、質の良い睡眠とは、脳の記憶整理やワーキングメモリーの掃除、脳内老廃物の排出などが十分に行われる睡眠である。体感としては、朝目が覚めたときに頭がスッキリしていたり、やる気に満ちている状態だ。正しい質の睡眠がとれているかは、起床4時間後に眠気を感じるかどうかでわかる。眠気を感じなければ、質の良い睡眠がとれているといえるだろう。脳の記憶整理はじめ寝ている間の脳の活動には時間が必要だ。部屋のゴミ箱からゴミを集めて、ゴミ捨て場に持っていくのだって時間がかかるし面倒な仕事だ。脳も同じことを考えている。時間にして大体7~8時間といわれており、この時間で質の良い睡眠をとることが目標となる。研究結果には、寝不足だと人の寿命を表すといわれるテロメアという染色体の一部が短くなるというものがある。テロメアがなくなると細胞分裂がおこなわれなくなるので、結果として自分に訪れるものが何であるかは想像できるだろう。睡眠をとりすぎている(9時間以上)場合に死亡率が上がるという研究結果もあるようだが、これには高齢者が含まれており、睡眠時間が長い=日中の活動量が短い故に運動量が下がり骨折などのケガから寝たきりになり、死亡率が上がっているという見方もあるため、一概には言えないそうだ。バリバリ現役の人は、そこまで気にしなくていいだろう。

この項では、睡眠の質に着目する。長さは意識しやすいが、質は意識しにくい。質を上げるには、脳と体にとって自然なことをするのがよいという理屈から、実践することは以下となる。

朝に日光を浴びる

前項でお話ししたが、日光にはブルーライトが含まれている。「朝に日光を浴びる」だけで睡眠の質がぐっと向上する。そもそも眠くなって寝るというのは、どのような状態なのだろうか。脳の仕組みから迫ってみよう。眠くなって寝るという状態は、副交感神経が優位となりリラックスしている状態だ。聞いたことがあるかもしれないが、寝ている間に脳は記憶の整理や、ワーキングメモリーの掃除を始める。翌朝目覚めたときに、あなたが気持ちよく活動できるよう、脳はあなたが寝ている間もせっせと仕事をしているのだ。あなたは「夜に副交感神経が優位になる状態」になる必要がある、つまり眠くなる必要があるわけだが、そのためにはメラトニンという睡眠物質を分泌させる必要がある。メラトニンが分泌されると体が睡眠状態に移行する準備を始め、副交感神経が優位になり眠くなる。では、メラトニンはどうやって分泌すればいいのか。「メラトニン、来いっ!」と念じればいいのか。そうではない。メラトニンには原料となるセロトニンという別の物質が必要だ。日中にセロトニンが多く分泌されると、分泌されて約15~16時間後に、メラトニンが自動で生成され始めるように体ができている。日中にセロトニンを分泌できれば、夜には自然と眠くなるのだ。これでもうわかったと思うが、「朝に日光を浴びる」ことで目からブルーライトを取り入れると、セロトニンが分泌され始める。結果、夜に寝れるようになるというわけだ。

「どのくらいの時間浴びればいいのか」、「雨の日や曇りの日はどうしたらいいのか」という疑問を持つ人もいるだろう。お答えすると、こうだ。

  • 15~30分浴び続ける(日光を浴び始めてからセロトニンが分泌され始めるまでに時間がかかるため)
  • 雨の日や曇りの日でも、セロトニンを分泌するのに十分な光量(ルクス)がある

お勧めなのは、朝起きたら15~30分ほど外に散歩にでかけることだ。後の「体を動かしていこう」でもお話しするが、運動するついでにセロトニンを分泌できるので、朝散歩は一石二鳥だ。雨の日でも曇りの日でも、朝散歩なら十分な光を浴びることができる。ちなみに、目からブルーライトを浴びることが大切なので、ブルーライトカットレンズの入った眼鏡やサングラスを着用することは避けたほうがいい。セロトニンを分泌する効果が薄れてしまう。また、当たり前だが日の出前に散歩しても意味がない。気合を入れて4時とか5時に起きて散歩しても日光が十分に出ていないのでよろしくない。建物に影ができる程度が丁度よい明るさなので、7時くらいに散歩にでればよい。逆算すると23時~0時に就寝できていればよいことになる。

部屋から出ることが辛い場合は、窓際に椅子を置いてカーテンを開けて日光を浴びるだけでも構わない。とにかく、朝目が覚めたら日光を浴びよう。

寝る90分前に入浴を済ませる

睡眠状態に移行するためには、メラトニンを分泌する以外にも大切なことがある。それは、深部体温を下げることだ。足の裏から熱を放出することで深部体温が下がり、眠気が誘発されるようになる。そのため、寝る直前に入浴してしまうと深部体温が高い状態のままになってしまい、上手く入眠することができない。寝る90分前を目安に入浴を済ませることが望ましい。

寝る2時間前からはブルーライトを禁止する

ここまでくるともはや説明する必要はないと思うが、夜にブルーライトを浴びてしまうと、セロトニンが分泌される→交感神経が優位になる→脳が活発になるので、この状態で寝ろというのが無理な話となる。また、部屋の明かりが白色灯だと明かりが強すぎて、脳が活発になりやすい。外を見てほしい。朝は明るい白色で、夕方近くなると日が落ちてきて暖色になり、夜は真っ暗になるはずだ。人間の体はこの明かりの変化を感じ取って、覚醒状態と睡眠状態をいききするようにできている。寝る2時間前はリラックスタイムとして、明かりは暖色系のものとし、PC、スマホ、TVは消して、本を読んだり、日記をつけたりして、寝る準備に入るよう心がけよう。

睡眠トラッカーのすすめ

前述したが、起床後4時間で眠気を感じるか否かが質の良い睡眠をとった一つの目安になる。が、非常にわかりにくい上に、気が付いたら4時間なんてとうに過ぎていて、どうだったかよくわからないということもある。というか、私はあった。そこで、私が導入してよかったものを一つ紹介しよう。Fitbitだ。もちろんGoogleからはお金を受け取っていない。Appleが好きならApple Watchでもいいが、睡眠状態を可視化してくれる睡眠トラッカーがついたウェアラブルバイスは強くお勧めする。これをみれば、レム睡眠、ノンレム睡眠中途覚醒が一目瞭然で、睡眠時間もすぐにわかる。また、睡眠状態の良し悪しを点数化してくれるので、「今日は87点だったから、いつも通りなら4時間後も眠くならないし、質が良かったんだな」とわかる。

睡眠トラッカーを選ぶときのポイントを一つだけ。バッテリー容量と着け心地だ。寝ている間につけ続けていないと意味がないので、頻繁に充電が必要だと気が付いたら電池切れしていて睡眠を計測し損ねたり、寝ているときに邪魔だったり不快だと最悪だ。このあたりは好みがあると思うので、調べてみてほしい。OuraRingという指輪型のデバイスが最近人気なので、こちらも一考してみてほしい。

体を動かしていこう

睡眠の質を上げる生活を送ろうとすると、必然的に就寝と起床時間が一定になってくる。そうすると日中の活動時間も一定になってくるので、徐々に生活リズムが作られてきているのではないだろうか。非常に良いことだ。なぜなら、このリズムが作られているということは、セロトニンが日中に分泌されるようになっているはずだからだ。

ここまで真面目に読んでくれている人は気づいているだろうが、セロトニンによって

  • 偏桃体の活動を抑制し、不安や恐怖に過剰反応しなくなる
  • 日中に活発に活動できるようになる

つまり、症状を改善傾向に持っていくことができる。

病院で処方される薬でもセロトニンを補えるが、リズムの良い生活を送ることでもセロトニンを十分分泌できる。またメンタル疾患の予防、治療には適切な運動療法薬物療法と同程度、もしくはそれ以上の効果があるという研究結果が多くある。つまり、薬なぞなくても、心と体を安定させることが可能なのである。前項までで睡眠については語った。ここで、もう一つの銀の弾丸を打ち込む時が来たようだ。さぁ、今までは頭を動かしていたので、ここからは「体を動かしていこう」

体を動かす、運動するとは、なんだろうか。運動は2種類に分類できる

有酸素運動とはウォーキング、ランニングなど呼吸しながら行える運動だ。無酸素運動は筋トレや全速力のダッシュなど息を止めて行う運動になる。それぞれで良いところがあるのだが、詳しいことは参考書籍 樺沢紫苑先生の「ブレインメンタル強化大全」を読んでほしい。ここではどちらも脳や体にいい影響を及ぼすホルモンが分泌されるし、セロトニンも分泌されるとだけ言っておこう。なので、有酸素運動と筋トレをしようというのが結論になる。では、どの程度やればいいのか。WHOに書かれている基準では、「週に緩い運動を150分、激しい運動を75分」しない人を運動不足としている。なので、これをクリアすればよい。週に有酸素運動を150分、筋トレを75分していけば最低ラインを突破できる。一日に換算すると有酸素運動は20分程度、筋トレは10分程度だ。なんだかできそうな気がしてこないだろうか。

朝散歩しよう

これは、「睡眠の質を上げていこう」でも言っていることだが、朝散歩するのは非常に良い。覚醒状態にしないといけないのは、脳だけでなく、体もだ。日光によって脳を覚醒し、筋肉を動かすことで体を覚醒させる。運動習慣の有酸素運動として取り入れる場合は、「速歩き」で行うことが大切だ。速歩きとは、息が上がっていて、ぎりぎり人と会話ができる程度の速度だ。朝散歩の時間を速歩きに変えるだけで、週に必要な有酸素運動の150分を余裕で確保できる。やらない手はない。新しいことを習慣化するときのコツは、既に習慣化されている行為にアドオンすることだ。朝散歩が習慣になっているなら、歩き方を変えるだけというのは習慣化しやすいはずだ。試してみてほしい。

筋トレしよう

筋トレはハードなイメージがあって、なかなか習慣化しにくい。やり始めたはいいが、続かないことが多いのではないだろうか。目標設定が高すぎると維持がしにくい。毎日筋トレを10分というのも、なかなか最初は難しいだろう。最終的に10分になればいいので、最初は10秒から始めよう。

なかやまきんに君Youtubeチャンネル「ザ・きんにくTV」

ザ・きんにくTV 【The Muscle TV】

筋肉芸人でおなじみの、なかやまきんに君。筋トレといえばこの人というイメージもあるだろう。「いやいや、こんな人の筋トレ動画とかハードで無理だよ」と思うかもしれないが、ところがどっこい。超初心者向けの筋トレ動画も多くアップロードされている。例えば、これだ。

【世界一楽】簡単で楽したい人は必見。毎日これだけで効果あり、大人気シリーズ第2弾です。衝撃のラストも注目だ。

他にもたくさんあるので、見てみてほしい。なかやまきんに君もおっしゃっているが、「続けることが大事。最初は10回でもいい。それを毎日続けることでの達成感と、それによって起こったちょっとした体の変化を感じてほしい。今まで10回でも辛かったのが、少し楽になったり、1回多く出来るようになったでもいい。変化に気づければ楽しくなってくるし、やりがいが出てきてさらにさらにできるようになっていく。」

プランクチャレンジ

個人的にお勧めなのが、30Days プランクチャレンジだ。調べてもらうとわかるが、肘をついた状態で腕立て伏せのようなポーズをキープする筋トレだ。30Days プランクチャレンジはその名の通り30日間で最初は30秒間から始めて、少しずつキープする時間を延ばしていき、30日目で5分間キープするようにしていこうというものである。肘をついた状態が苦しい場合は、腕立て伏せを始めるときのように腕を伸ばしたポーズでもいい。やり始めていくと徐々にできるようになっていき達成感もあるので、筋トレに不慣れだったり、続けていく自信がない人にもとっつきやすい。スマホのアプリにもプランクチャレンジのためにカレンダーとその日に実施する時間やタイマーがついているものが数多くあるので、トライしてみてほしい。

ここまでで、有酸素運動と筋トレ習慣がついてくると、欲がでてくるかもしれない。もっと運動したいだったり、細マッチョになりたいなど。そこからはお好きにどうぞ。習慣化する力もついて、脳も体も元気になっているあなただったら、問題なくできるだろう。

整体のすすめ

運動習慣が定着してくると、自身の体にだんだんと興味がでてくるかもしれない。私の場合は猫背だったり、首の痛みだったりが気になり始め、せっかく時間があるのだから整体に通って治してもらおうと思い、通い始めた。今も通院しているのだが、首の痛みは劇的に改善したし、筋トレしているときに体が歪んでいるがゆえに起こっていた変な個所の筋肉痛もなくなってきており、大変満足している。体を矯正してもらうと背筋も伸びて気持ちがいいし、自分の体にも愛着が湧いてもっと大事にしようと思うものだ。これもお勧めの一つである。

ご飯を食べよう

毎日3食、決まった時間に、栄養バランスを考えて、よく噛んで、ご飯を食べよう。以上。

としてしまうと乱暴すぎるので、特に私が気にしていることをお伝えしよう。

朝ごはんは絶対に食べる

起床したときは体が飢餓状態になっているので、朝ごはんを食べないと貧血を起こしてしまう。また、食事をすることで胃腸を刺激すると自律神経が刺激され交感神経に切り替わる。朝散歩と組み合わせることで、脳も体もしっかり覚醒するので、朝ごはんは欠かしてはならない。あとは、食べたらちゃんと歯を磨こう。歯を磨くことが大事なのは、歯茎に適度な刺激が与えられると覚醒状態になりやすいからだ。また歯周病予防のためにも絶対に必要だ。病原菌の類は、基本的に脳の血管をすり抜けることができないため問題ないが、歯周病菌だけは別だ。歯周病菌は血管をすり抜け脳細胞に直接ダメージを与えてくる。ある研究では、認知症患者の脳内には歯周病菌が蔓延っており、一つの原因ではとも言われている。認知症になりたくないなら、歯はちゃんと磨こう。

夜ごはんの時間に注意する

朝ごはんで言ったことの効用が得られるのは、夜も同じだ。つまり、夜遅くにご飯を食べて、歯を磨くと

  • 胃腸が消化のために、交感神経を優位にして、目が覚める
  • 歯茎が刺激されると、覚醒状態になる

ので、寝つきが非常に悪くなる。入眠できたとしても自律神経は交感神経優位で活動を続けてしまうため、睡眠が浅くなり質が低下する。いいことが全くない。基本的に就寝2~3時間前には夕食を済ませることをお勧めする。

おすすめの食べ物と栄養素

栄養バランスについては、色々あるので語り始めると終わらなくなってしまう。ここでは私が気にして食べているものを2つ紹介しよう

バナナ

バナナは、完全食といわれるほど栄養素が多く含まれている。一日に必要な栄養素をバランスよく摂取できるのでおすすめだ。

オメガ3

魚には、オメガ3脂肪酸という油が含まれている。オメガ3は脳の神経伝達物質の流れを潤滑にする効果があり、記憶力向上、集中力向上など、ざっくりいうと頭が良くなる。毎食魚を食べることが望ましい。が、毎食食べるのはなかなか難しい。魚が好きでも、魚焼きグリルを掃除したり、手が生臭くなるのは好きにはなれないだろう。そこで魚にかわり毎日の必要なオメガ3を摂取する方法として、えごま油をお勧めする。えごま油は無味無臭の油で、この中にもオメガ3が豊富に含まれている。毎日小さじ一杯で一日に必要な摂取量を満たすことができる。一点注意としては、えごま油は非常に熱に弱いため、加熱してしまうと栄養素が壊れてしまう。一番いいのは、小さじ一杯をそのまま飲むことだが、無味無臭とはいえ油をそのまま食べるのは抵抗があるだろう。その場合は、ヨーグルトやお味噌汁、サラダにかけるなどして摂取することがお勧めだ。また、えごま油はカロリーが高いので、健康に良いからと言って一日の摂取量目安を超える量を摂取することは避けよう。太る上に、体が取り込み切らずに外に流れ出て無駄でしかない。ちなみに、アマニ油もオメガ3を多く含んでいるのだが、こちらは独特の味がするので、あまりお勧めしない。

あとは、体にいいものをバランスよく、食べていってもらえればよいだろう。最後に付け加えると、食べたもので体が作られているということだけは、お忘れなく。

作った生活リズムを保とう

恐らく真面目にここまで実践していれば、何の意識をせずとも、脳と体に良い生活リズムが作られていて、運動もして、ご飯も食べれているはずだ。心配せずとも、今まで通りにしていればいいのだが、人間は完全に習慣化できてなかったり、大丈夫だろうと少しサボったりすると、昔の慣れた習慣に戻ろうとする。これは、「あなたの中のもう二人」がまだ納得しておらず、あなたを過去に揺り戻そうとするからだ。その点にだけは気をつけなければならない。

潜在意識と無意識

擬人化をしてはいるが、決してスピリチュアルな話ではない。わかりやすく客観的に捉えるためだが、彼らはあなたの中に確実に存在する。人の意識は、

  • 顕在意識(つまり、あなた)
  • 潜在意識
  • 無意識

にわかれる。無意識の中に潜在意識がとか、逆だったりとか、人や先生によっても捉え方がまちまちなので、ここでは、仮に以下とする。

  • 無意識: あなたが意識せずとも、あなたの体を動かしてくれている意識
  • 潜在意識: あなたの思い出や記憶、感情から作られた、もう一人のあなた

ここまで記事を読むのにスマホやPCの画面をスクロールした時に、あなたは意識的にスクロールしただろうか。きっとしていないのではないだろうか。あなたは、ただ記事を読むという意識しかしていないのに、指が勝手に動いて画面をスクロールしていたはずだ。これは、無意識が体を動かしてくれているからだ。

一方、潜在意識の例というのは、なかなか難しいが直感がわかりやすいだろうか。何かを直感で決めるとき、あなたは意識的に直感を使おうとは考えていないはずだ。ふと頭に出てきた答えを直感と言って使っているはずだ。浮かんだ答えの理屈は、考えればでてくるだろうが、答えを受け取った瞬間は理屈もへったくれも持っていないだろう。これは、潜在意識が今までのあなたが得てきた経験や感情、そして経験則から得た結果から答えを編み出し、その答えだけをあなたに伝えているからだ。

あなたの中の潜在意識、無意識は、あなたが今まで生きてきた中で感じてきた思いや感情、習慣、経験、周りからの影響によって形作られたノートのようなものだ。ノートの1ページ1ページにはありとあらゆることがボールペンで書かれていて、決して消すことができない。刻みつけられている。

彼らの役割

人間の体というのは、複雑だ。生きるために肺を動かし酸素を取り入れ、血中のヘモグロビンに酸素を結合させ、末端まで運ぶ。肺を収縮し二酸化炭素を吐き出し体内のphを下げ、ヘモグロビンから酸素を離脱、静脈から心臓に送り返すなどなど。これらの活動の殆ど全ては無意識が行ってくれている。それ以外にも、歩いていて人にぶつかりそうになったら、とっさに避けるだろう。避けないとぶつかってしまうと潜在意識が過去の経験から覚えているからだ。潜在意識と無意識があなたに代わって、あなたが安全に生きることができるように守ってくれている。

これは決して体の動きだけではない。つまり考え方や感情の発露など精神的な部分でもそうだ。彼らはあなたを守るために安全な方向に考えを誘導しようとする。安全な方向とはリスクがない、もしくはリスクを完全に予測できる方向だ。つまり過去に上手くいった考え方や習慣にあなたを導こうとする。そして、あなたは決してそれに抵抗することはできない。動物が本能的に身の危険を感じると体を丸めて自身を無意識に守るように、リスクが予測できないことや慣れていない行為というのは、人間にとって身の危険だ。チャレンジングなことをしようとすると、彼らはあなたを守るために行動を始めるというわけだ。あなたという人間のうち、あなたという顕在意識はたったの10%しかない。残りの90%は潜在意識と無意識に支配されている。抗える余地はない。

あなたの意思で動くには

では、彼らを抑えて、あなた自身の意思で動くにはどうすればよいのか。簡単だ。あなたが「やりたい」と思うだけでいい。ん?おかしいって?どんなにしていても前の状態に戻ろうとするのに、「やりたい」と思うだけでいいとは?

「やりたい」なのだ。「やるべきだ」でも「やったほうがいい」でも、「やらなければならない」でもない。「やりたくて仕方ない」だ。それが唯一彼らを納得させて、あなた自身の意思で動く方法だ。やらないと気が済まない状態が唯一彼らが黙って、あなたのやることを見守ってくれる。そして、上手く行ったとき、彼らはその行為を新しい成功体験として受け入れて、ノートの新たな1ページに書き足してくれる。

冒頭で全部を一気にやらないでほしいと言ったのは、このためだ。全部を一気にやるということは、身の危険が一挙に押し寄せてくるに等しい。巨大な岩石があなたに向かって物凄い勢いで転がってくるようなものだ。インディージョーンズだって逃げ出すのだから、普通の人が受け止めるなんてできるわけがない。だが、ここで少しずつ自分のペースでやってみよう。巨大な岩石は砕かれ、小さな小石となってあなたに飛んでくるさまを思い浮かべてほしい。小石とはいえ石だ。受け止めるときに指を切ってしまい痛い思いをするかもしれない。けれど両手でキャッチすることはできるだろう。キャッチできたら成功だ。上手くキャッチできたという経験はノートに刻まれる。そうなれば、あとは簡単だ。潜在意識と無意識が喜んで応援してくれる。

「やりたい」という気持ちは、原動力だ。心の底から「やりたい」と思っていれば、あとの二人が囁く「痛いし、危ないからやめたほうがいい」という悪魔の甘言に惑わされることはない。

「やりたい」という気持ちがあるときは、あなたの中で小さな火が灯っている状態だ。あなたがその気持ちにのり、すぐに行動に起こせば、小さな火は徐々に大きくなり誰にも止められなくなる。鉄は熱いうちに打つのだ。そうすれば、あとの二人は悪魔から福音をかき鳴らしあなたを応援する天使になるはずだ。

「やりたい」と思い、「すぐに行動」する。そして、「少しずつ自分のペース」でだ。「やりたい」とあなたに少しでも思ってもらえるように、今までの文章一つ一つに理屈を付け加えてきた。長たらしい文章には飽き飽きしていると思うが、理由はそういうことだ。

ここまで来たら、あと少しだ。もう少しだけ付き合ってほしい。

自分達と対話しよう

前項で、あなたを含めた3人の話をしてきた。そして、あとの二人はあなたにとって、悪魔にもなるし、天使にもなるということもお話しした。これ以上に語ることは、もうあまりないのだけれど少しだけ付け加えようと思う。あなたは、どうあるべきなのだろうか。

自然でいること

きっとこれ以上のことはないだろう。自然でいることだ。自然とは、ありのままを受け入れるということだ。あとの二人を含めて、ありのままでいることが、あなたにとって最も自然だろう。あとの二人が管理するノートは今までのあなたに関する全てが記されているが、「過去の産物」でしかない。あなたが未来を見据えて新しいことに挑戦したり、目標を掲げて突き進もうとしたときに、彼らは、あなたを守るため過去に安全だったやり方がなにであったかをノートを見返して、あなたに教えてくる。けれど、過去安全だったやり方で進む道の先に、あなたが望んだ結果があるとは限らないし、ほとんどの場合ないだろう。なぜなら、彼らは過去しか知らないからだ。未来という不確実な道を進むのに、過去の栄光は役に立つこともあるだろうが、必要ではない。

過去は過去だ。決して、縛られたり、囚われてはいけない。彼らが、あなたが進む道に過去の罠を仕掛けたことに気付くためには、全てを捨て去り、「未来に向かって良いと思う行動をすぐにする」しかない。

すぐに行動する

すぐに行動することこそ、究極だ。考えすぎてはいけない。考えれば考えるほど、彼らが仕掛けた過去の罠に自ら飛び込むのと同じだ。あなたが思考するとき、彼らも一緒に思考しノートから過去の栄光を引っ張り出してくる。あなたは、あなたしか考えていないと思うが、そんなことはない。気が付かないうちに彼らの罠に引っかかってしまうのだ。これが、バイアス、固定観念である。ここから外れるには、「考えこまずに」、「すぐに行動し」、「早く失敗して」、「課題を見つけ」、「その課題をつぶす行動をすぐにする」というサイクルを回すしかない。

だが、中には私のように、行動を起こす前に考えすぎてしまって苦しんだり、腰が重かったり、わかっていても行動に移せないという人もいるだろう。そういった人向けに、私も実践しているメソッドを紹介したい。調べれば出てくるものではあるが、まとまっているものはあまり目にしない。書籍として読みたい場合は、参考書籍を読んでほしい。ここでは、複数の書籍から良いと思ったものをまとめる。

ポモドーロテクニック

聞いたことがあると思うが、一つのことに集中するメソッドとしてポモドーロテクニックがある。

  1. やることを決める
  2. 25分間のタイマーを始めて、やることを始める
  3. 25分経ったら、途中でも中断して、5分休憩

このサイクルを3~4回実施したら、30分の長めの休憩をとるというものだ。

短い時間で区切って作業するのは、作業が単調にならず、またタイマーを始める=やることを始めるというパブロフの犬のような効果もあり、実践しやすい。

ウルトラディアンリズムの波に乗る

ポモドーロテクニックは、25分という時間の中で集中するものだが、私の場合、興が乗ってきたときに強制的に中断しないといけないというのがしっくりこなかった。実践しているときは、集中できるのだが、もう少しだけやりたいという時もある。そこで、もう一つのリズムの紹介だ。

人間の集中力は、もって1時間だとか90分だとかという話を一度は聞いたことがあるのではないだろうか。これは、ウルトラディアンリズムと呼ばれる、脳の周波数の周期が関係していると言われている。様々な研究結果から、脳は約90分の覚醒状態と約20分の休息状態を日常の中で繰り返しているということがわかっている。

この波に乗ることで、集中する時間と休む時間を作り、メリハリよく動くことができる。

  1. 90分のタイマーを始める
  2. この90分のうちに「やること」を順番に並べる
  3. 順番にこなす。この時90分内で必ず片づけるように意識する
  4. 仮に全てのやることが終わらなくても、90分経ったら中断して20分休憩に入る

このやり方は、参考書籍 上岡正明さんの「高速仕事術」により詳しく書いてある。

ポイントは

  • タイマーを始めてから、「やること」を決める
  • 90分内に「やりきる」ことを意識する

だ。これらによって、以下の効用があると思っている。

  • タイマーを始める=すぐに取り掛かるというパブロフの犬になれる
  • タイマー時間内でやることを決める=先に考えすぎない
  • やりきる意識=選択を強いられる場合に、選択肢をあえて狭め、すぐに行動し失敗できる

個人的には、こちらのほうがお勧めだ。もっと詳しい理屈やメソッドが他にもあるのだが、ここで書きすぎてしまうと、営業妨害で訴えられてしまいそうで怖い。興味のある人はぜひ参考書籍を読んでみてほしい。

大事にしていることは何か?

大事にしていること、つまりあなたにとって大事な価値観とは何だろうか?自然でありのままの自分を受け入れるために、自身の大事な価値観が何で、優先していることは何であるかを整理する必要がある。お金持ちになりたいという想いと、愛ある暮らしがしたいという二つを持っているときに、どちらかを選ばないといけない状況になるかもしれない。あまり想像したくないが、相手が浮気をして離婚調停中だったら、どうだろうか。お金を優先して損害賠償を取るのか、愛を優先して相手を許しもう一度やり直すのか、決めなくてはならない。価値観の優先順位がわかっていないと決められないし、仮にえいやっで決めたとしたら、あなたにとって優先順位が低い価値観による選択は、あとで必ず後悔することになる。どれだけ自分の中で屁理屈をこねてもだ。

天使たちのノートを見返そう

価値観は、外部からの刺激から生まれるものだ。この世に生まれ落ちた瞬間に価値観を持っているわけはない。言葉を話せるようになった子供が突然「ボク/私は、愛がすべてだと思っている」なんて話し始めたら怖すぎる。

最初は触覚、その次に両親の声、言葉、成長して友達との経験、それらの積み重ねによって価値観が作られていく。つまり、価値観を知るには、過去を見ていく必要がある。ここで天使たちのノートが役に立つ。そこには、あなたの過去の全てが記されているからだ。

さて、価値観を探索する旅は、そう難しいものではないが、なかなか長い道のりだ。やり方も色々あるだろう。ここで、先人の知恵を借りるのが一番良い。やりたいことは価値観を探索する旅に出ることであって、旅に出かける準備の仕方を考えることではない。リュックに何を詰めればいいのかは、知っている人に聞くのが一番早く、確実だ。

とても良いやり方が書いてあり、私も実践した書籍を紹介しよう。参考書籍 八木仁平さんの「世界一やさしいやりたいことの見つけ方」だ。この書籍の目的は、やりたい仕事は何かというのを理屈から迫って見つけていくというものだが、大事にしている価値観が何であるかという探し方も書いてあり、天使たちのノートの見方もばっちり書いてある。ぜひ読んでいただきたい。何度も言うが、どこからもお金はもらっていない。

全く興味はないだろうが、この書籍を実践した私の価値観ランキングはこのようになる。

順位 価値観 意味合い
1 幸福 (自分らしく突き詰めた美しいものをみんなと共有して)幸福でいたい
2 共有 (自分らしく突き詰めた美しいものを)みんなと共有したい
3 美しさ "(自分らしく突き詰めて)美しいものを知る| 美しくある| 美しいものを生み出す"
4 追求 (自分らしく行動し)突き詰めること
5 行動 (自分らしく)行動することから始めること
6 ありのまま 自然体で自分らしくあること

少しずつ仕事関連の本を読もう

自分の中の旅を終えて無事に帰ってきたあなたは、もしかしたら、こう思っているかもしれない。「休むのに飽きてきた」と。少しずつ自分が整ってきていることを実感し、もしそう思えているなら、チャンスだ。何度でもいうが「やりたい」気持ちが熱いうちに叩くべきだ。

仕事への復帰を目論んでいるなら、このあたりで、「少しずつ仕事関連の本を読もう」。今まで仕事に忙殺されてきたことだろうから、読もうと思っていた本が部屋に積まれているかもしれない。仕事をするという感覚を思い出すにも、それに纏わる本を読むというのはお勧めだ。

時間に気を付けよう

あなたの心に火が灯って、大きくなっているところに水を差すようで申し訳ないのだが、注意してもらいたいことがある。「やりすぎ」注意だ。久々に車に乗ると、ついついアクセルを全開に踏み込んでレインボーロードを駆けたくなるが、それはいけない。あなたはペーパードライバーに戻っているので確実にハンドル操作を誤り、コースアウトする。残念なことにジュゲムはいないので、コースアウトしても誰も助けてくれない。安全運転するためには、時間を区切って行うのがよいだろう。ウルトラディアンリズムの波にのり、あなたの業務時間だった時間帯に実践してみることで練習にもなるはずだ。

自分達を信じよう

さぁ、これで最後だ。もはや語りたいことは全て語りつくしたので、何も言うことはない。

ここまでやってきたなら、きっとあなたはもう別人だ。なんでもできるし、なんにでもなれる。やりたいことをやればいいし、失敗して転んだって、立ち上がって、また歩き出せるはずだ。

適応障害になるまで私は、仕事で失敗したら「自分のせいだ」、「どうして、あの時こうしなかったのか」、「もっと頑張らなくちゃ」とずっと自分を攻撃していた。その時は自傷行為をしているなんて全く思っていなかった。そして、こうも思っていた。「上司や部長の期待に応えないといけない」、「失望させたくない」、「失敗したくない」、「一度失敗したら、評価は下がって、もう上がらない」と。いつも仕事のことばかり考えていて、自分の体や心に全くもって無頓着だった。

今振り返ってこう書いてみると、なんと醜いことか!他人のことばかり気にして、自分が全くいない。どこにも「自分」がいない、伽藍洞だ。

仕事は手段だ。自分の全てではない。頭の中でわかっているだけで、真に理解していなかった。倒れたあの日までは。

倒れてからお休みをもらって数日たったある日、やっと実感した。ゆっくりした時間を過ごすことで心に幾ばくかの余白ができ、自然とそう思い、心の奥底に響いた。自分の心と体が一番大切で、守ることができるのは自分だけだと。

私にとって自然であること、気持ちよく生きることとは、何だろうか。その答えを探すために、色々な本を読み漁った。その結果が、この記事だ。

冒頭にお話しした通り、まだ私も立ち上がっている最中ではある。けれど、倒れるまでの日々とは比べられないほど、自分を大切に思って、そのために必要な行動も続けられていると思っている。自分を大切にできているがゆえに、他人も大切にしたいという想いも生まれた。

立ち直るまでの日々は、決して楽ではなかったし、苦しみもあった。けれど、こんな大仰な文章を書ける程度には回復している。

ここまでの日々で得たものが同じ苦しみを味わっている誰かの役に立つのではないか、なんとかして伝えられないかという想いだけで、書き始めた。こういった文章を書くのは決して得意ではないし、正直に言うと今回が初めてだ。

拙い文章だと思う、上手く理解してもらえない文章だとも思う。

けれど、想いを伝えたいという「やりたい」気持ちのままに、思った通りに書けばいいと思った。理解が得られなくてもいい、こんな人間もいるんだと伝われば十分だと。

とてもとても長い文章になってしまった。最後に伝えたかったのは、「自分達を信じよう」だ。

「やりたい」という想いのまま、諦めずに、あなたを含めた3人で、最後まで走ることができると信じよう。大丈夫。立って歩け、前へ進め。あなたには立派な足がついているのだから。